日本のインターネットの歴史は、米国のARPANETとは少し異なり、大学や研究機関が主導する学術的なネットワークから発展しました。

1. 1980年代：学術ネットワークの黎明期

日本のインターネットの源流は、1984年に東京大学、慶應義塾大学、東京工業大学間で始まった JUNET (Japan University NETwork) という学術ネットワークにあります。これは、まだTCP/IPが主流になる前の、牧歌的な研究者コミュニティであり、日本のネットワーク技術者たちが育つ土壌となりました。

2. 1980年代後半〜：WIDEプロジェクトと本格的なTCP/IP導入

1988年、日本の「インターネットの父」と呼ばれる村井純氏（慶應義塾大学）が中心となり、 WIDE (Widely Integrated Distributed Environment) プロジェクト が発足しました。このプロジェクトは、日本におけるTCP/IPの研究開発と普及を本格化させ、1989年には日本と米国を常時接続する最初のTCP/IP回線を開通させました。これが、現在の日本のインターネットの直接的な始まりです。

3. 1993年〜：商用インターネットサービスの開始

学術研究が中心だったインターネットが、ビジネスや一般家庭に広まるきっかけとなったのが、商用インターネットサービスプロバイダ（ISP）の登場です。1992年に設立された IIJ（株式会社インターネットイニシアティブ） が、1993年に日本で初めて商用インターネットサービスを開始しました。これにより、企業などが月額料金を支払ってインターネットに接続できるようになりました。

4. 2000年代〜：ブロードバンド先進国へ

2000年代に入ると、日本は世界有数のブロードバンド先進国へと進化します。特に2001年にサービスを開始した「 Yahoo! BB 」が、低価格なADSLサービスを提供したことで価格破壊が起こり、FTTH（光ファイバー）を含めた高速インターネット回線が爆発的に普及しました。

このように、NetPracticeで学ぶTCP/IPという基本技術は、日本においてはまず学術ネットワークで研究・運用が始まり、その後商用サービスとして一般に普及し、今では世界最高水準の高速なインターネット環境へと発展を遂げています。